61.高取城
日本100名城
1. 高取城の概要と歴史
高取城は奈良県高市郡高取町にある日本の城で、1332年(元弘2年)に南朝方に属した高取の豪族・越智邦澄が標高583mの高取山の頂に築いた山城です。当初は天守や櫓などの一切ない掻揚げ城でしたが、天正13年(1585年)に豊臣秀長の家臣であった本多利久が城主となり、山城式に平城式手法を取り入れた珍しい近世城郭へと大改修されました。昭和28年(1953年)に国の史跡に指定され、平成18年(2006年)には日本100名城に認定されています。
2. 日本三大山城としての地位
高取城は岡山の備中松山城、岐阜の美濃岩村城に並ぶ日本三大山城の一つで、麓から天守台までの高低差は実に390mと日本三大山城の中でも最も高く、「日本一の山城」と呼ぶにふさわしい規模と高さを誇ります。城内周囲は約3km、郭内周囲は約30kmにも及ぶ広大な規模で、これは姫路城と同等の規模に相当します。NHKの『日本「最強の城」スペシャル』では見事、日本最強の城に選ばれました。
3. 芙蓉城と呼ばれた美しさ
高取城は城内に大小の天守に27の櫓、33の門を持ち、それらが積み重なる白亜の立体的な美しさは芙蓉の花に喩えられ、「芙蓉城」とも呼ばれました。「巽高取雪かとみれば 雪でござらぬ土佐の城」と謳われ、城下町より望む白漆喰塗りの天守や櫓が29棟建て並んだ姿は、おそらく姫路城のような白い連立した城郭で、「山にある姫路城」と表現されるほどの美しさを誇っていました。
4. 本多氏による大改修と城郭の発展
天正17年(1589年)、本多利久は家臣諸木大膳に命じ、新しい縄張りをもって築造しました。本丸には多聞櫓で連結された3重の大小天守、二の丸には大名屋敷が造営され、城内には三重櫓が17基建ち並び、また郭内には侍屋敷も整備され、他には類を見ない広壮な山城が出現しました。それぞれの曲輪には総延長3.5kmに及ぶ石垣が巡り、高石垣は高いところでは12mに達していました。
5. 植村氏の時代と幕末まで
寛永17年(1640年)に植村家政が入城してからは、植村家の居城として明治維新まで14代228年にわたって続きました。植村時代の高取城は、それぞれ3重の天守と小天守をはじめ、22基の櫓、5基の多門櫓、33棟の門、2900メートルの土塀、3600メートルの石垣、9の橋梁、5の堀切からなる山城でした。1863年(文久3年)には天誅組の変で襲撃を受けましたが、13代目の植村家保がこれを撃破し、強靭な城として名を馳せました。
6. 城郭の構造と防御システム
高取城は連郭式縄張りと言われており、山城であるにもかかわらず広い敷地をもち、標高が高い場所に築城されているわりには、天守、櫓、門等の多くが建設される余裕があり、平山城と同じような構えをもっています。本丸への道中には何度も折れ曲がっている「七曲り」と呼ばれる箇所や、「重荷を上げることができたら米一升を与える」といわれたほどの急坂「一升坂」があり、敵の侵入を困難にする工夫が随所に施されていました。
7. 石垣と遺構の現状
廃城後、建造物のほとんどが失われましたが、高石垣をはじめとした遺構が人為的に破壊されることなくほぼ完全な状態をとどめています。現在は緑に覆われ、石垣を留めるのみの姿ながら、本丸・二の丸跡の立派な石垣からは往時の栄華が感じられます。約10mある高石垣などの遺構は貴重な城郭資料として保存され、山中に忽然と巨大な石垣群が現れるその様が、リアル天空の城ラピュタともいわれています。
8. アクセスと登城ルート
高取城へのアクセスは近鉄吉野線「壺阪山駅」から徒歩約2時間の登山道が整備されており、城下町から大手道を行く王道コースが推奨されています。車でのアクセスも可能ですが、城周辺に駐車場はなく、道幅が狭いため注意が必要です。壺阪寺経由のルートもあり、こちらは登坂がなだらかで徒歩約1時間でアクセス可能です。登城の際は、スニーカーや長袖を着用するなど、登山に適した服装が必要です。
9. 100名城スタンプと御城印
日本100名城スタンプは高取城内ではなく、城下町の観光案内所「夢創舘」に設置されています。開館時間は9:30~16:30(月曜休館)ですが、時間外や休館日でも、案内所屋外の入口向かって右手に24時間利用可能なスタンプがあります。御城印も同じく夢創舘で販売され、本多氏のあとに14代に渡って城主であった植村氏の家紋「丸に一文字割桔梗(植村割桔梗)」の朱印が押印されたデザインで、1枚300円で販売されています。
10. 見どころと観光の魅力
高取城の見どころは、国見櫓からの大和平野を見下ろす絶景で、大阪の「あべのハルカス」も高い確率で見ることができます。二ノ門外には明日香村から石材として運ばれた「猿石」と呼ばれる石像があり、制作は飛鳥時代と推測されています。城下町の土佐街道には江戸時代の面影を残す石畳と低い軒先の町家が並び、街道沿いの家々にひな人形を展示する「町屋の雛めぐり」も有名で、高取城とあわせて歴史散策を楽しむことができます。
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