40.山中城
日本100名城基本情報
住所 | 静岡県三島市山中新田 |
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電話 | 055-985-2970(山中城跡案内所・売店) |
築城年 | 1560年代(永禄年間) |
営業情報
開館時間 | 案内所・売店:10:00~16:00(冬季は10:30~15:30) |
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入場料 | 無料(公園自体は入場自由) |
休館日 | 案内所・売店:月曜日、年末年始(悪天候時臨時休業あり) |
1. 山中城の歴史と概要
山中城は静岡県三島市山中新田にある戦国時代末期の山城で、永禄年間(1560年代)に北条氏康によって築城されました。小田原に本城を置いた後北条氏の支城として位置づけられ、箱根十城の一つとして小田原城の西方防衛を担う最重要拠点でした。標高約580mの箱根外輪山の西側に築かれ、東海道を城内に取り込む形で造られた関所としての機能も持つ城塞でした。1930年(昭和9年)に国の史跡に指定され、現在は史跡公園として整備されています。
2. 北条氏独特の築城技術と障子堀
山中城最大の特徴は、北条氏独特の築城技術である「障子堀」と「畝堀」です。障子堀は空堀の中に土手状の畝を掘り残して区画を作る堀で、上から見ると障子の桟のように見えることからその名が付きました。この構造により、敵兵が堀を渡る際に何度も上り下りを繰り返す必要があり、守備側が弓矢や鉄砲で狙いやすくなる巧妙な防御システムでした。当時は関東ローム層の赤土が露出し、雨に濡れると非常に滑りやすく、攻撃側には困難な障害となっていました。
3. 豊臣秀吉の小田原征伐と山中城の戦い
1590年(天正18年)、豊臣秀吉による小田原征伐が開始されると、山中城は最前線の軍事拠点として急遽大改修が行われました。しかし工事は間に合わず、未完成のまま豊臣軍を迎えることになりました。3月29日、豊臣秀次率いる6万8千の大軍が山中城を攻撃し、松田康長、間宮康俊ら約4千の北条勢が必死に防戦しました。特に間宮康俊は岱崎出丸付近で激しく抗戦し、豊臣方の一柳直末などの武将を討ち取りましたが、圧倒的な戦力差の前にわずか半日で落城しました。
4. 発掘調査と史跡公園としての整備
1973年(昭和48年)から三島市による本格的な発掘調査が開始され、曲輪の周囲に巡らされた堀や土塁などの防御施設、木橋の跡や門柱跡などが明らかになりました。発掘調査により、北条氏の築城技術の詳細が判明し、障子堀や畝堀の構造が復元整備されました。現在は風化防止のため芝生が張られていますが、遺構の構造が明確に把握できるよう整備されており、北条氏の築城方法を詳しく知ることのできる貴重な城跡となっています。
5. 宗閑寺と敵味方の墓
三ノ丸跡に建立された宗閑寺には、山中城で戦死した敵味方の武将の墓が並んでいます。北条方の城主松田康長、間宮康俊兄弟らの墓と、豊臣方の一柳直末の墓が隣り合って建てられており、激戦の末に散った武将たちを偲ぶことができます。宗閑寺の存在は、この地で繰り広げられた壮絶な戦いの記憶を今に伝える重要な史跡として、多くの訪問者の心を打っています。戦国時代の無常さと武士の生きざまを物語る場所として、歴史的価値の高いスポットです。
6. 箱根旧街道と石畳
山中城跡公園のすぐ脇には、箱根旧街道の石畳が約350mにわたって復元されています。これは江戸時代の東海道の一部で、平安時代から主要な街道として使われていた「箱根八里」の名残です。石畳は当時の旅人が歩いた道を再現したもので、山中城が街道を監視・封鎖する関所としての機能を持っていたことを実感できます。石畳を歩くことで、戦国時代や江戸時代の旅人の気分を味わうことができ、歴史の重みを感じられる貴重な体験となります。
7. 富士山と駿河湾の絶景
山中城跡からは、天気の良い日に富士山と駿河湾の素晴らしい景色を一望することができます。特に西櫓跡や岱崎出丸からの眺望は絶景で、戦国時代にこの城が戦略的要衝であった理由を実感できます。西櫓からは御殿場・裾野方面、岱崎出丸からは伊豆北部と駿東の大半を見渡すことができ、まさに「見張りの城」としての機能を果たしていたことがわかります。障子堀と富士山を一緒に撮影できる絶好のフォトスポットとしても人気を集めています。
8. 田尻の池と箱井戸
山中城内には「田尻の池」と「箱井戸」という2つの池があり、城兵の重要な水源として機能していました。田尻の池は馬の飲料水として、箱井戸は将兵の飲料水として使用され、比較的標高の高い山城でありながら豊富な水源を確保していました。現在の田尻の池では夏になると美しいスイレンの花が咲き、戦国時代の実用的な施設が現在は自然の美しさを演出する場所となっています。長期の籠城戦にも対応できるよう設計された、北条氏の実用的な城造りの一端を知ることができます。
9. 山中城名物とグルメ
山中城跡案内所・売店では、障子堀の形をした「障子堀ワッフル」(200円)が名物として販売されています。また、名物の「寒ざらし団子」や「天たまそば」なども味わうことができ、城跡散策の疲れを癒してくれます。売店では山中城をデザインした紙ロールなどのオリジナルグッズも販売されており、訪問記念として人気があります。これらのグルメやグッズは、城跡見学をより楽しく思い出深いものにしてくれる要素として、多くの観光客に愛されています。
10. アクセスと観光情報
山中城へは、JR三島駅南口から東海バス「元箱根港行き」で約30分、「山中城跡」バス停下車すぐです。「三島1日券みしまるきっぷ」(1,500円)を利用するとお得にアクセスできます。車の場合は国道1号沿いに無料駐車場があります。100名城スタンプは案内所・売店入口に設置され、営業時間外でも利用可能です。御城印は売店で300円で購入でき、休業日には販売ポストが設置されます。見学コースは「戦国山城探訪コース」として約1時間半で主要な遺構を巡ることができ、土の芸術と呼ばれる美しい堀の数々を堪能できます。